やるきがでないひのこと
やる気が出ない朝というのは、決まって天気とは関係ない。
晴れていようが雨が降っていようが、身体のどこかかについているはずの、やる気スイッチがオフになっている。
目覚ましを止める手が少し重く感じたり、コーヒーの香りがいつもほど心を持ち上げてくれなかったり。
心理カウンセラーという仕事柄、私はよく「やる気を出す方法」を尋ねられる。
でも、やる気というものは、蛇口の水のように捻れば出てくるものではないらしい。
むしろ、心の中の小さな湖が、知らないうちに水位を下げてしまった状態に近い。ほっとけばそのうち溜まるし、焦ればかえって濁ってしまう。
だから私は、やる気が出ない日には、あえて何かを「始めない」。
代わりに、小さな観察をする。
たとえば、窓辺に落ちる光の角度。
盛大に伸びをしたときの背中の音。
湯気がゆらゆら揺れるコーヒーカップ。
そんな、見過ごしていたものに目を向けていると、いつのまにか心にスペースが生まれる。

やる気というのは「やるぞ」という意志の力ではなく、スペースのある心に自然と流れ込んでくるものなのだと、カウンセリングを続けるうちに気づいた。
クライアントにもときどきこう伝える。
「今日はエネルギーが少ない日なんですね。じゃあ、その少ないエネルギーを丁寧に扱ってあげましょうか」と。
エネルギーが少ない日は、無理に高く飛ぼうとしなくてもいい。むしろ、低空飛行のときにしか見えない景色がある。
洗濯物の肌ざわりとか、温かい飲み物のほっとする温度とか、
心がしんと静まっているときにしか気づけない世界。そういう日があっていい。
そういう日がないと、心の湖はちゃんと満ちてこない。
もし今、あなたがやる気の出ない日の真ん中にいるのなら、どうか慌てなくていい。
今日は、湖の水位をそっと戻す日。
やろうと思っていたことをひとつ休んでも、あなたの価値は少しも揺らがない。
そして、夕方ごろになって、ようやく肩の力が抜ける瞬間がある。
もしかしたら、明日は何かできるかもしれない。
そんな感覚が、風のように戻ってくる。
やる気とは、追いかけるものではなく、迎え入れるものなのだ。
どうぞ遠慮なく、おやすみなさい。
どうぞ遠慮なく、おやすみなさい。


