
小学校の6年間、
ほとんど話をしなかったMちゃんという女の子がいます。
正確には、Mちゃんの「話し声」を聞いたことがありませんでした。
そう、Mちゃんは誰とも話さなかったのです。
Mちゃんは、自宅では家族と何ら問題なく、むしろおしゃべりなぐらいの女の子。
ある特定の場所でだけ話せなくなるという症状があったのです。
幼少期の一時的なもので、
その多くは青年期になるとだんだんと解消していくことが多いようなのですが、
(医学的な見解や治療については、わたしには出来かねますので、
ここで詳しくは述べませんが。)
一時期、Mちゃんにむりやりにでも話させようというような、
そんなムードがクラスの中に湧きあがったことがありました。
この夏が終わればもう小学校を卒業というような頃で、
いろいろな雰囲気の中に、「このままでいいんだろうか?」というような、
そんな焦りが、
先生に、Mちゃんの家族に、クラスメイトの中にあった時期です。
でも、Mちゃんは話しませんでした。
正直、みんなガッカリしました。むりなんだろうと思いました。
そんなわたし達に、新年を迎えた頃に届いたものがありました。
年賀状です、Mちゃんからの。
そこに書いてあったのは、色鉛筆のピンクの文字で、
「なかよくしてくれてありがとう」
わたし達にとって、初めて聞いたMちゃんの声です。
Mちゃんの存在というのは、長らくわたしの記憶の中にありましたが、
その後の彼女がどう生きていったのかを、わたしは知りません。
ただ風の便りで聞いたMちゃんは、
わたし達よりもずっと早く結婚をし家庭をもったということ。
きっと、おしゃべりなお母さんになっていることでしょう。
だってもともと、話すのが大好きだったはず。
ありあまるだけの個性や想いがあるから、むしろうまく言葉にして表現出来なかっただけ。
そう捉えてみたほうが、しっくりくるのです。
そんなMちゃんを、ふと思い出したカウンセラーのひとりごとでした。